日本企業の分析

株式会社出前館 決算分析

株式会社出前館ってどんな会社?

株式会社出前館は東京都渋谷区に本社を置く、宅配デリバリー専門サイト「出前館」の運営、通信販売事業を行なっている会社です。2020年8月期の連結売上高は約103億円、連結従業員数は312人となっております。比較的新しい会社で1999年に事業をスタートし2000年にはデリバリー総合サイトの出前館をオープンしました。その後、YAHOO、LINE、NTTドコモ等の様々な事業者と提携し事業を拡大しております。2006年には大阪証券取引所へ上場を果たしました。2020年4月にLINE株式会社等への第3社割り当て増資を行いLINEの親会社であるNEVER Corporationの子会社となっております。

各種指標及び株価の推移

株価の推移

2020年8月期から過去5年間の株価の推移は以下のとおりです。

株価は2018年頃までは右肩上がりで推移しておりましたがその後は低迷傾向にありました。直近では回復しております。日経平均とはほとんど連動していないことが分かります。

各種指標(2020年8月時点)

株価収益率(PER) ー倍 

株価純資産倍率(PBR)  6.6倍

2020年8月期は赤字決算でしたので株価収益率は測定できません。株価純資産倍率は6.6倍と高い水準にあり市場からは大きく期待されている銘柄であることが分かります。

損益計算書分析

2020年8月期の連結損益計算書の概要は以下の通りとなっております。

売上高は約103億円となっております。売上高の内訳は以下の通りです。

出前館サービス利用料が売上高の約55%を占めています。出前館のサイトやアプリから利用者が出前を注文した場合に加盟店から手数料を得る仕組みとなっております。2020年8月末時点におけるアクティブユーザー数は392万人、加盟店数は3.3万件となっております。

次いで大きな金額を占めているのが配送代行手数料となっております。配送機能を持たない飲食店向けのサービスで、出前館が代わりに自社の配送拠点から個人宅へ料理を届けるサービスとなっております。ウーバーイーツと競合するサービスです。

手数料収入が中心であり原価がほとんどかからないため粗利率は約70%と非常に高くなっております。一方で販管費が約99億円となっており営業利益は-26億円となっております。

販管費の内訳は以下の通りです。

最も大きい金額を占めているのは広告宣伝費となっております。売上を伸ばして固定費負担を減らすためにはユーザー数を増やさなければなりませんから積極的に広告に投資をしているようです。2020年8月期に赤字が大きく拡大したのは広告宣伝費への積極的な投資が挙げられます。2019年8月期の広告宣伝費は約16億円でしたから、広告宣伝費を2倍以上に増やしています。

次いで大きな金額を占めているのは雑給と給料手当といった人件費となっております。特に雑給が大きくなっています。雑給が大きくなっているのは先ほど紹介した配送代行手数料が大きく伸びていることが関係していると思われます。

2019年8月期と比較して配送代行手数料収入は7倍に伸びています。一方で配送にかかるアルバイトへの人件費や業務委託費も大きく伸びております。配送手数料収入は1回につき数百円〜千円程度でしょうから、人件費を考えればそれほど儲からないことが予想されます。上記の雑給の伸びを見る限りでは、配送手数料で儲けを出すのはかなり難しいのでは無いかと思われます。

貸借対照表分析

2020年8月期の連結貸借対照表の概要は以下のとおりとなっております。

当ブログでは今までに100社以上の企業の決算書を分析してきましたが、その中でも最もシンプルな連結貸借対照表となっております。資産のうち大部分が現預金と未収入金、負債はほぼ未払金のみとなっております。2019年8月期まではソフトウェアが7億円程度計上されておりましたが、減損しております。

2020年4月にLINE株式会社等へ第3社割り当て増資を行い300億円を調達しております。2020年8月期は41億円の赤字となっておりますが、現預金が豊富にあることから当面の資金は問題がなさそうです。

まとめ

今回は宅配デリバリー専門サイトの「出前館」を運営する株式会社出前館を取り上げました。シェアリングデリバリー事業が拡大する前までは出前館は黒字が続いておりました。自社で配送を行わず仲介をして手数料を得るというビジネスモデルであれば比較的固定費が少なくリスクが低いジビネスモデルとなっておりました。一方でUbereatsの急激な拡大を考えれば出前館もシェアリングデリバリー事業に本格的に参入しなければ、そのまま負けてしまっていたかもしれません。NERVER Corporationの傘下に入ったことで、資金力もつきUbereatsと競い合うことができるようになりました。今後はUbereatsに勝てるかどうか、シェアリングデリバリー事業をどのように収益化していくかが課題になると思います。

総合評価

以上を踏まえ筆者の株式会社出前館の財務数値の評価は以下の通りです。