海外企業の分析

Farfetch Limited 決算分析

Farfetch Limitedってどんな会社?

会社概要

Farfetchの会社概要は以下のとおりです。

会社の概要
  • 本社所在地:ロンドン
  • 設立:2007年
  • 事業内容:高級ブランド品のe-コマースサイトの運営
  • 売上高:約14億6,000万ドル(2020年12月期)
  • 従業員数:5,441人(2020年12月期)

設立からまだ15年以下ですがインターネット通販市場の拡大の波に乗って事業を大きく拡大してきた会社です。

株価の推移

Farfetchの2018年9月の上場以来の株価の推移は以下のとおりとなっております。

上場後株価は低迷傾向にありましたが直近では大きく上昇していることが分かります。

損益計算書分析

2020年12月期の連結損益計算書の概要は以下の通りとなっております。

今回の分析では1ドル当たり103円で換算をしています。

Furfetchの2020年12月期の損益計算書のポイントは以下のとおりです。

売上高の内訳

粗利率は46%となっていますが、そもそも売上の構成はどのようになっているのでしょうか。売上の内訳は以下のとおりとなっております。

デジタルプラットフォームサービス売上

デジタルプラットフォームサービス売上はECサイトのFarfetch関連の売上です。

3rd partyと1st Partyの違いはFarfetchが在庫を持っているか持っていないかの違いです。

3rd partyの場合はFarfetchへ出品するブランド側が在庫リスクを負っていまず。売上には手数料部分のみが計上されるため利益率は高くなります。

1st partyはFarfetchが在庫リスクを持っています。販売代金の全額が売上として計上されますが利益率は低くなります。

Farfetchとしては3rd party売上の方が在庫リスクが無いため好都合です。人気ブランドの場合にはブランド側の交渉力が強く、Farfetch側が在庫リスクを負う形になっているのではないかと思われます。

フルフィルメント売上・ブランドプラットフォーム売上

フルフィルメント売上は梱包、配送、顧客サービス対応等の手数料収入です。Farfetchの倉庫はイタリア、イギリス、アメリカにありFarfetchに出店しているブランドから商品の保管、梱包、発送等を請け負うことで収益をあげています。

ブランドプラットフォームは2019年に買収したNew Guards関連の売上となっています。New Guardsは傘下の会社を通じて複数のアパレルブランドを展開しています。

地域別の内訳

Farfetchの2020年12月期の売上高の地域別の内訳は以下のとおりです。

地域別の内訳は少し意外な結果となりました。大きな割合を占めているのがその他です。世界中の様々な国でFarfetchが利用されているということが推定できます。

販管費について

Farfetchが営業赤字になっている大きな要因は売上高販管費率が約80%と非常に高くなってしまっているためです。販管費の内訳は以下のとおりとなっております。

管理費や株式報酬費用は主に人件費から構成されていることが想定できます。従業員数が2020年12月時点で従業員数が5,441人もいます。売上が大きく伸びていますが、これだけの人件費をまかなえるだけの収益はあげられていない状況のようです。

販売促進費は主にインターネット広告費用が計上されています。減価償却費はNew Guardsのブランドや無形資産の償却費が大きな割合を占めているようです。

金融商品の評価損

2020年12月期のFarfetchの最終利益は約3,400億円の赤字となっております。その最も大きな要因は金融商品の評価損を約2,722億円を計上したことによるものです。

この巨額の損失はFarfetchが2020年に3回に分けて発行した転換社債に関連して発生をしております。転換社債の概要は以下のとおりです。

転換社債は転換価格で株の発行を受けることができる条件がついた社債です。株価が上がれば、転換価格と株価の差額が社債保有者にとっては利益になります。

2020年12月末時点の株価は63.8ドルで転換価格を大きく上回っています。この1年間でFarfetchの株価は急騰したため社債の公正価値が大きく増加したことから巨額の赤字計上となりました。

アリババ・リシェモンとの提携

株価が急騰した背景にはアリババ・リシェモンとの提携があります。

Farfetchは中国最大のECサイトを展開するアリババと、多くの高級ブランドを傘下に持つリシェモンと業務提携を発表しました。この提携によりアリババとリシェモンはFarfetchの中国事業に対してそれぞれ12.5%を出資することになりました。

これによりFarfetchの中国事業の拡大への期待が高まり株価は大きく上昇しました。

業績の推移

Farfetchの過去4年間の売上と利益の推移は以下のとおりとなっております。

売上は右肩上がりで推移しており急成長していることが分かります。一方で赤字幅の大きく拡大を続けております。

赤字の大きな原因となっている販管費の推移は以下のとおりです。

全ての費目で大きく増加していることが分かります。人件費関連支出が大きなウエイトを占めており、人員数が増えていることが大きな増加要因となっています。

貸借対照表分析

2020年12月期のFarfetchの連結貸借対照表の概要は以下のとおりとなっております。

2020年12月期に約3,430億円の巨額の赤字を計上してしまったことから債務超過となっております。

負債のうち最も大きな金額を占めているのがデリバティブ負債となっております。こちらは主に先述の転換社債関連の負債です。株価が大きく上昇したため負債計上額も大きく増加しました。

まとめ

今回は高級ブランド品のECサイトを展開するFarfetchを取り上げました。売上は急成長を遂げていますが赤字幅も拡大しており、黒字化のめどは立っていないような状況となっています。成長が著しいe-コマース事業で単価が高い高級ブランド品を扱っているということもあり軌道に乗れば大きな利益が見込まれます。そのため株式市場からの期待も高く、時価総額は2兆円に迫る勢いです。現状では高い株価を背景として資金を調達ができており、当面は問題がなさそうです。とはいえ、今後も赤字が継続し黒字化のめどが立たない場合には資金調達が難しくなる可能性もあります。

今後も売上は順調に拡大することが見込まれますが、どのタイミングで利益の確保に向かうかが一つのポイントとなるのでは無いかと思います。

総合評価

以上を踏まえ筆者のFarfetch Limitedの財務数値の評価は以下の通りです。