日本企業の分析

株式会社LIFULL(ライフル) 決算分析

株式会社LIFULLってどんな会社?

株式会社LIFULLは東京都千代田区に本社を置く不動産情報サイトLIFULL HOME’Sの運営を行なっている会社です。2019年9月期の連結売上収益は392億円、連結従業員数は1,297人となっております。1997年に不動産情報の無料閲覧サービス会社として株式会社ネクストという社名で事業をスタートしました。(現在の社名であるLIFULLへは2017年に変更しております。)事業を拡大し2006年に東証マザーズへの上場を果たしました。

各種指標及び株価の推移

株価の推移

株式会社LIFULLの2019年9月から過去5年間の株価の推移は以下の通りとなっております。

2015年の年末ごろに株価は大きく上昇しましたが、その後は大きく下げてしまい低迷傾向にあることが分かります。

各種指標(2019年9月時点)

自己資本比率 74.9%

株価収益率(PER) 38.73倍 

株価純資産倍率(PBR)  2.90倍 

自己資本比率は74.9%と財務体質は健全な水準にあります。株価収益率と株価純資産倍率は共に高い水準にあり市場からの期待が大きい銘柄であることがわかります。

損益分析

株式会社LIFULLの2019年9月期の損益計算書の概要は以下の通りとなっております。株式会社LIFULLはIFRSを適用しております。

粗利率は87%と非常に高い水準になっております。主な事業内容が不動産情報サイトを通じた不動産業者への紹介であるため原価がほとんどかからないからでしょう。その分販管費を占める割合が大きくなっております。約307億円計上されており、営業利益率は10.4%となっています。

販管費について

販管費の内訳は以下の通りとなっております。

販管費のうち最も大きな割合を占めるのが広告宣伝費となっております。事業の特性上、いかに多くの人にLIFUL HOME’Sのサイトへアクセスしてもらうかが、売上に直接影響を与えるため広告宣伝に莫大な費用を投下しているようです。次いで大きくなっているのは人件費です。LIFUL HOME’Sのサイトの運営管理や、不動産事業者向けの営業人員が多く必要なのでしょう。

貸借対照表について

株式会社LIFULLの2019年9月期の連結貸借対照表の概要は以下の通りです。

ご覧の通り、資産の大部分を占めるのがのれんとなっております。主に過年度に買収したスペインのアグリゲーションサイト運営会社のTrovit Search S.L.Uと2019年1月に買収したMtula社に関するのれんとなっております。(詳細は後述します。)株式会社LIFULLはIFRSを適用しているため、のれんの規則的償却は行なっておりません。IT企業ですので有形、無形固定資産は31億円とそれほど多くなく、コンパクトな貸借対照表となっております。

セグメント別分析

株式会社LIFULLはHOME’S関連事業と海外事業の2つを報告セグメントとして識別しており各セグメントの事業内容は以下の通りとなっております。

2019年9月期のセグメント別の売上と利益は以下の通りとなっております。

HOME’S関連事業について

上記の通り売上と利益の大部分をこのHOME’S関連事業が稼得していることがわかります。

以下は過去3期のHOME’S関連事業と広告宣伝費の推移です。(2017年9月期は決算期変更のために会計期間が6ヶ月しかないため除外してあります。)

HOME’S関連事業の売上高は成長をしておりますが、同時に広告宣伝費も大きく増えていることがわかります。巨額の広告宣伝費を投下しているものの、期待通りに売上が伸びていないという見方もできると思います。とはいえ住宅情報サイトではトップレベルのシェアを誇っているため今後も安定的に利益を稼ぐことが期待できる事業だと思います。

海外事業について

株式会社LIFULLは子会社を通じて海外事業を展開しております。

海外事業のうち特にスペインのアグリゲーションサイト運営会社のTrovit Search S.L.Uが好調のようです。2019年9月期のTrovit Search S.L.Uの業績は売上高が約46億円、経常利益が約16億円となっており、かなり高収益な事業となっております。アグリゲーションサイトとは、様々なWEBサイトの情報を集約して掲載するサイトで、収益は主に広告収入のようです。

MiTULA社の買収について

LIFULLはこのアグリゲーションサイト事業を強化するために2019年1月にオーストラリアのアグリゲーションサイト運営会社のMtula社を買収しました。買収金額は約137億円で、そのうち114億円はLIFULLの株式を対価として引き渡しています。この買収により約91億円ののれんが発生しております。

アグリゲーションサイトがどのようなものか、私自身あまり理解していないということもありこの買収の成否については分かりませんが、スペインのTrovit Search S.L.Uが今のところ好調なことを考えると、Mitula社が今後LIFULの業績に好影響を与えることを期待したいです。

まとめ

今回は不動産情報サイトLIFUL HOME’Sの運営を行う株式会社LIFULLを取り上げました。ここ数年の業績の推移はHOME’S関連事業の成長が鈍化する中で、海外事業への先行投資が進んだことによるものではないかと感じました。先ほども述べましたが、HOME’S関連事業は国内事業でかつトップシェアを誇る事業ですから安定的に利益を確保することが期待できると思います。HOME’S関連事業で稼いだ利益をアグリゲーション事業等の成長事業へ投資することで再成長を実現することを期待したいです。

総合評価

以上を踏まえ筆者の株式会社LIFULLの財務数値の評価は以下の通りです。