日本企業の分析

セコム株式会社 決算分析

セコム株式会社ってどんな会社?

セコム株式会社は東京都渋谷区に本社を置く警備請負サービス、セキュリティサービス、防災事業、メディカルサービス、損害保険事業等の様々な事業を行なっている会社です。2020年3月期の連結売上高は1兆600億円、連結従業員数は58,404人の大企業です。その歴史は1962年に日本警備保障株式会社として事業をスタートしました。その後東京オリンピックの警備を担当するなどして事業を拡大し1974年に東京証券取引所市場第二部へ上場を果たしました。

各種指標及び株価の推移

株価の推移

セコム株式会社の2020年3月期から過去5年間の株価の推移は以下のとおりです。

株価は概ね日経平均と同じ動きをしていることが分かります。

各種指標(2020年3月時点)

株価収益率(PER)21.98倍 

株価純資産倍率(PBR) 1.89倍

株価収益率と株価純資産倍率は少し高く市場からは一定の評価を得ている銘柄であることが分かります。

損益計算書分析

2020年3月期の連結損益計算書の概要は以下の通りとなっております。

売上高は前期から1兆円の大台を超えて2020年3月期は1兆600億円となっております。粗利率は約32%となっております。

セコムといえば警備関係の事業が有名ですが他にも様々な事業を展開しております。事業内容の概要は以下の通りです。

各事業の売上高は以下の通りとなっております。

セキュリティサービス事業について

セキュリティサービスが売上高の約半分を占めています。

セキュリティ事業はホームセキュリティや、高齢者見守りといった家庭向けのものと、警備、集配金業務等の事業者向けに大きくわけることができます。セコムのセキュリティ事業における2020年3月期時点の契約件数の内訳は以下のとおりとなっております。

合計で約340万件の契約があることが分かります。セコムのセキュリティサービスは基本的に月額制でしょうから、安定した収益の獲得が期待できます。また警備だけではなく、勤怠管理や、生体認証、といった様々なサービスを展開しています。顧客基盤を生かして今後も様々な派生事業を展開していくことが期待できます。

その他事業について

セキュリティサービス以外の事業は主に子会社を通じて展開しています。

防災事業は能美防災株式会社を通じて展開しておりビルや住宅向けの防災設備を販売しています。地域空間情報サービス事業は株式会社パスコを通じてレーザーを使用した測量業務を主に公共機関向けに提供しています。保険事業はがん保険、火災保険、自動車保険等を販売しております。

様々な事業を展開しており一見して軸が無さそうに見えますが、危機対応に関する事業という点では一貫しているように思えます。安心を買うためなら少し高くても払ってしまうのが人間の性ですから収益性が高い事業が多くなっております。

販管費について

セコム株式会社の2020年3月期の販管費の内訳は以下のとおりとなっております。

人件費が1,107億円と約56%を占めています。セキュリティサービスは契約数が341万件もあり、営業人員が多くいることが想定されます。賃借料、減価償却費も大きく、固定費が大きい費用構造になっていることが分かります。

貸借対照表分析

セコム株式会社の2020年3月期の連結貸借対照表の概要は以下のとおりとなっております。

売上債権の回転期間は1.6ヶ月となっております。有形固定資産が3,863億円と比較的大きくなっております。建物や土地が子会社で多く計上されているようです。オフィスビルや医療施設を保有しており賃貸に出しております。投資有価証券も約2,523億円計上されており、余剰資金は株式、国際、社債で運用しております。

借入金はほとんどなく、財務体質は非常に健全な水準にあります。

セグメント別分析

セコム株式会社の各セグメント別の過去6期の売上の推移は以下の通りとなっております。

売上は上昇傾向にあることが分かります。BPO・ICT事業で売上が増加していますが、主に2018年3月期に株式会社TMJを買収したことによる増加となっております。

セグメント別の利益の推移は以下の通りです。

利益については大半がセキュリティサービス、防災の2つの事業が稼いでいることが分かります。

まとめ

今回はセキュリティサービス事業をはじめとして様々な事業を展開しているセコム株式会社を取り上げました。セキュリティサービス事業はサブスクリプション型の収益モデルであり、安定的な収益が期待できます。また防犯や警備といった事業は今後も無くなることはなく永続が期待できる事業ではないかと思います。子会社の能美防災を通じて行なっている防災事業についても、火災報知器等の防災機器の設置は消防法によって義務付けられており、今後も安定して収益を獲得することが期待できます。防災、セキュリティサービス以外の事業についても黒字となっております。海外売上割合は5%程度で海外展開は進んでいないようです。今後も新たな需要を掘り起こして、自社の幅広い顧客へ販売していくことが成長の鍵となるでしょう。

総合評価

以上を踏まえ筆者のセコム株式会社の財務数値の評価は以下の通りです。