日本企業の分析

トレンドマイクロ株式会社 決算分析

トレンドマイクロ株式会社ってどんな会社?

トレンドマイクロ株式会社は東京都渋谷区に本社を置く、コンピューター・インターネット用セキュリティ関連製品の開発、販売事業を行なっている会社です。2019年12月期の連結売上高は1,651億円、連結従業員数は6,854人となっております。トレンドマイクロは1988年にロサンゼルスで事業をスタートしました。創業以来セキュリティ対策ソフトウェアの製造販売事業を手掛けており、1991年には「ウィルスバスター」の販売を開始しました。その後2000年に東京証券取引所市場第1部へ上場を果たしました。

各種指標及び株価の推移

株価の推移

トレンドマイクロ株式会社の2019年12月期から過去5年間の株価の推移は以下のとおりです。

株価は概ね上昇傾向にあることが分かります。

各種指標(2019年12月時点)

株価収益率(PER) 27.86倍 

株価純資産倍率(PBR)  4.18倍

株価収益率と株価純資産倍率は高く、市場から大きく期待している銘柄であることが分かります。

損益計算書分析

トレンドマイクロ株式会社の2019年12月期の連結損益計算書の概要は以下の通りとなっております。

粗利率は約80%となっております。ソフトウェアの販売会社であるため粗利率は非常に高くなっております。その分販管費が952億円と巨額になっております。販管費の主な費目別の内訳は以下のとおりです。

販管費の約半分が従業員給料となっており固定費が大きい費用構造であることが分かります。売上原価の大部分も人件費となっております。会計面で見ても人が大きなウェイトを占めていることが分かります。トレンドマイクログループの人員の職種別の内訳のとおりです。

研究開発の人員が最も多くなっております。インターネットセキュリティの分野は日々進歩しているため、ソフトウェアの開発には多くの人員が必要なことが分かります。また売上は小口が多いでしょうから、営業の人員も多くなっています。

貸借対照表分析

トレンドマイクロ株式会社の2019年12月期の連結貸借対照表の概要は以下のとおりとなっております。

資産科目は現預金や余剰資金を運用している有価証券、投資有価証券が占める割合が非常に大きくなっております。ソフトウェア会社は設備投資が不要で運転資金が少なくて済むという利点があることがトレンドマイクロの貸借対照表からも読み取れます。

負債科目を見ると短期繰延収益、長期繰延収益が合計で約1,300億円も計上されていることが分かります。トレンドマイクロの事業はインターネット関連のセキュリティソフトウェアの販売やセキュリティサービスの提供です。顧客と一定の期間に渡って保守などのサービスの提供を行う契約を締結し売上を計上しているものと考えられます。そのため期末日時点で未提供の分については繰延収益として計上しているのでしょう。短期繰延収益が長期繰延収益よりも大きい金額が計上されていることから、1年以内の短い契約が多いのではないかと推定できます。

自己資本比率は51%と財務体質か健全な水準にあると思います。また負債も上記の通り支払いを伴う債務ではないため実質的な自己資本比率はもう少し高いと考えることもできます。

セグメント別分析

トレンドマイクロ株式会社は地域別にセグメントを分類しておりセグメント別の業績は以下のとおりとなっております。

日本向けの売上が約4割、海外向けの売上が約6割となっております。利益率は日本向けが高いことが分かります。

地域別の売上高の推移は以下のとおりとなっております。

北米、アジア・パシフィック地域の売上高が大きく伸びていることが分かります。一方で日本向けはあまり伸びていないことが分かります。

まとめ

今回はコンピューター・インターネットセキュリティ用製品の開発販売を行なっているトレンドマイクロ株式会社を取り上げました。5G通信の普及でIOTの時代が来ると言われております。様々な物がインターネットにつながれば、コンピューターウィルスの脅威は増えていくことは容易に想像できますから、まだまだ成長市場であると思います。また会社の沿革を見ると、すごいスピードで海外へ事業を展開していることが分かります。扱っている製品、サービスの性質上インターネットがあれば、どの国でも需要がある製品・サービスであるため海外展開がしやすい事業であると言えると思います。

一方で懸念点があるとすれば人材の確保ではないでしょうか。ソフトウェアの会社ですから人材が命です。インターネットセキュリティへの関心が高まれば、その分野に精通した人材は争奪戦になることが想定されます。人材を育成と、流出の防止が今後も成長を続けていくためには不可欠となるのではないでしょうか。

総合評価

以上を踏まえ筆者のトレンドマイクロ株式会社の財務数値の評価は以下のとおりです。