海外企業の分析

コストコ(COSTCO WHOLESALE) 決算分析

コストコってどんな会社?

コストコ(COSTCO WHOLE SALE CORPORATION)はアメリカ合衆国ワシントン州に本社を置く会員制倉庫型店舗の運営事業を行なっている会社です。2020年8月期の連結売上高は約17.5兆円、連結従業員数は約273,000人の超大企業です。その歴史は比較的新しく1983年にシアトルで1号店をオープンして事業をスタートしました。2020年8月現在ではアメリカの他、プエルトリコ、カナダ、イギリス、日本等に合計で795店舗を展開しております。

各種指標及び株価の推移

株価の推移

コストコの2020年8月から過去5年間の株価の推移は以下のとおりです。

過去5年間の株価は右肩上がりで推移していることが分かります。

損益計算書分析

コストコの2020年8月期の連結損益計算書の概要は以下の通りとなっております。コストコはアメリカの会社ですのでドル建てで財務諸表を作成しております。今回の分析では1ドルあたり105円で換算して分析を進めていきます。

売上高は17.5兆円、粗利率は約13%となっております。一般的なスーパーマーケットの粗利率は約25%ですからコストコの粗利率は非常に低い水準にあることが分かります。

売上高の内訳

コストコの2020年8月期の売上高の内訳は以下のとおりとなっております。

コストコは食料品のお店のイメージがありましたが、電気器具やアパレル、ガソリンといった食品以外の分野も大きな割合を占めていることが分かります。

会費収入は金額が小さいものの大きな収益の柱となっています。コストコは会員制の店舗であり基本的に会員とその同伴者以外は入店することができない仕組みとなっております。会費は国によって異なりますが、アメリカでは年間60ドルとなっております。さらに60ドルを追加で払えばエグゼクティブ会員として2%のポイント還元を得ることができます。

営業利益が約5,700億円、会費収入が3,700億円ですから考え方によっては利益の大半は会費収入から得ていることが分かります。

店舗あたりの売上高

下表はオープンした年と、店舗あたりの売上高の関係を示したものです。

少し難解ですが、オープンしてから年月が経つにつれて売上が伸びていることが分かります。オープン後に少しずつ周辺の住民が会員になっていくため売上が増加しているのではないかと想定できます。今後も会員数の増加につれて売上が伸びていくことが期待できます。

業績の推移

コストコの過去5年間の売上と利益の推移は以下の通りです。

単位(million dollar)
単位(million dollar)

売上、利益ともに綺麗な右肩上がりで推移していることが分かります。地域別にはアメリカ向けの売上が中心となっております。その他の地域においても売上、利益が順調に伸びているようです。

貸借対照表分析

コストコの2020年8月期の連結貸借対照表の概要は以下の通りとなっております。

総資産は約5.8兆円となっております。資産の中で最も大きな金額を占めているのは有形固定資産となっております。

固定資産の内訳は以下のとおりです。

減価償却累計額の内訳が分かりませんが、店舗関連の固定資産が大半を占めていることが想定されます。コストコは以下のとおり自社所有の店舗が大半を占めているのが特徴です。

自社の店舗が多いのは倉庫型の超大型店舗であるため、賃貸で適した物件が少なく自社で店舗投資をせざるを得ないからかもしれません。その分店舗への投資は慎重にならざるを得ません。コストコは業績が好調ですが急拡大せずに地に足をつけて着実に成長をしていることが伺えます。

棚卸資産の回転期間は0.88ヶ月となっており一般的なスーパーマーケットより長くなっております。棚卸資産<買掛金となっており、運転資金はそれほど必要なさそうです。

自己資本比率は約33%となっております。借入金も比較的少なく財務体質は健全な水準にあると言えます。

まとめ

今回は日本でも大人気のコストコを取り上げました。コストコの商品は品質が高くて評判がいいものが多いです。その品質はしっかりと決算書にも裏付けられています。原価率が90%以上もあり非常に高くなっております。会費収入を除けばほとんど利益が出ていない状況です。大規模な店舗で販管費を低く抑えながら、品質の良いものを大量に販売することで、顧客は満足度の高い買い物ができるという仕組みです。

コストコは2つの点でまだまだ伸び代があるのではないかと考えます。まず店舗あたりの売上はまだまだ伸びることが期待できます。会員制の店舗ですから最初は会員数が少なくても、口コミ等で会員が増えるにつれて顧客は今後も増えることが期待できます。2つ目は北米以外での展開です。コストコの売上は北米地域向けの売上が8割以上を占めています。自社で店舗を展開しているため、急速な成長は期待できないものの日本で成功したように今後もアジア等の他の地域で展開することで成長が期待できるでしょう。

総合評価

以上を踏まえ筆者のコストコの財務数値の評価は以下のとおりです。