日本企業の分析

サイボウズ株式会社 決算分析

サイボウズ株式会社ってどんな会社?

サイボウズ株式会社は東京都中央区に本社を置く、グループウェアの開発、ライセンス販売事業を行なっている会社です。2019年12月期の連結売上高は134億円、連結従業員数は741人となっております。1997年に愛媛県松山市で事業をスタートし、その僅か3年後の2000年に東京証券取引所マザーズへ上場を果たしました。

各種指標及び株価の推移

株価の推移

サイボウズ株式会社の2019年12月から過去5年間の株価の推移は以下の通りです。

株価はこの2年間で大きく上昇していることが分かります。

各種指標(2019年12月時点)

株価収益率(PER) 67.24倍

株価純資産倍率(PBR)  17.05倍

株価収益率と株価純資産倍率はともに非常に高い水準にあり、市場からは大きく期待されている銘柄であることが分かります。

損益計算書分析

サイボウズ株式会社の2019年12月期の連結損益計算書の概要は以下の通りです。

粗利率は約92%と非常に高くなっております。サイボウズの主力商品はグループウェアであり、パッケージ販売とクラウドを通じた販売を行なっております。ソフトウェアの開発にはそれなりに大きな投資が必要ですが、ほとんどが固定費であるため販売量が増えれば、粗利率は非常に高くなります。人気スマホゲームの会社の粗利率が非常に高いのと同じしくみです。

販管費について

販管費の内訳は以下のとおりとなっております。

最も大きな割合を占めているのが人件費となっております。サイボウズの主力製品のKintoneは約14,000社、サイボウズofficeは約66,000社が導入しており、非常にたくさんの会社と取引があることが分かります。裏を返せば1社当たりの売上高は小さいということです。これだけ多くの会社を顧客として抱えているため、営業、顧客管理やトラブル対応には多くの人員が必要であるため、人件費が大きくなっていることが分かります。

広告宣伝費の割合も大きくなっております。グループウェアは顧客企業の日々の業務に大きく関与するサービスですから、ある程度信頼が置ける会社のシステムでないと導入してもらえないものです。広告宣伝によって知名度を上げることで新規顧客の獲得につなげているのでしょう。

売上高と販管費の推移

サイボウズ株式会社の過去5年間の売上高と販管費の推移は以下のとおりとなっております。

過去5年間で販管費は大きく増加していますが、それ以上に売上高が増加しているため増益が続いております。費目別に見ていくと広告宣伝費はあまり増えていませんが、人件費が大きく増えていることが分かります。サイボウズの決算説明資料によると社員の離職率は低下してきており、人材に積極的に投資していることが伺えます。

海外事業について

サイボウズは中国、ベトナム、アメリカ、オーストラリアに海外子会社を抱えております。海外子会社に関する詳しい業績は開示されておりません。しかし連結と単体の業績を比較することで海外子会社の概要を確認してみましょう。

以上の通り単体の業績の方が連結の業績よりも良いことから、子会社は赤字であることが推定できます。売上のほとんどが国内事業向けであり海外事業はあまりうまくいっていないようです。

連結貸借対照表分析

サイボウズ株式会社の2019年12月期の連結貸借対照表の概要は以下のとおりです。

流動負債より流動資産の方が大きくなっております。流動負債の中で最も大きいのは前受け金であり、顧客からグループウェアの利用料を前払してもらったものが計上されているのでしょう。そのため負債ではあるもののキャッシュが流出する性質のものではないため債務の支払い能力には問題なさそうです。固定資産の中で最も大きいものは工具器具備品となっております。こちらはサーバー関連機器が計上されております。

まとめ

今回はグループウェアの開発、販売事業を行なっているサイボウズ株式会社を取り上げました。社内のコミュニケーションの円滑化ツールとしてグループウェアを導入する企業は増えており、サイボウズの売上は好調に推移しております。売上原価については固定費が大きい費用構造となっており、売上の伸びに付随して利益も大きく伸びております。新型コロナウィルスの影響によりテレワークが今後ますます増えることは間違えないでしょう。テレワーク導入によって社員同士でのコミュニケーション不足が課題となれば、グループウェアに白羽の矢が立つことは容易に予想ができます。今後も売上が伸びていくことが期待できそうです。

一方で海外事業については、あまりうまくいっていないようです。会社の業務に大きく関わるシステムであるため、導入実績が無いとサービスが魅力的でも及び腰となってしまうのだと思います。中国、アメリカ、ベトナム、オーストラリアと複数の国で事業を展開しているようですが、特定の国に絞る等の思い切った決断が必要では無いかと思います。

総合評価

以上を踏まえ筆者のサイボウズ株式会社の財務数値の評価は以下の通りです。