日本企業の分析

富士通株式会社 決算分析

富士通株式会社ってどんな会社?

富士通株式会社は川崎市に本社を置くシステム、サーバー、携帯電話基地局、パソコン等の製造販売を行なっている会社です。2020年3月期の連結売上高は3兆8,577億円、連結従業員数は129,071人の大企業です。その歴史は古く1935年に富士電機から電話交換装置、電話機、装荷線輪の製造及び販売権を継承して富士通信機器製造会社として設立されました。第二次世界大戦後には政府から電話機の指定製作所に指定され、その後はコンピューター事業にも乗り出しました。物を売るだけではなく、お客様の問題を解決していくという思いから生まれた、様々サービス事業が近年の売上の中心を占めています。

各種指標及び株価の推移

株価の推移

富士通株式会社の2020年3月期から過去5年間の株価の推移は以下のとおりです。

株価は概ね上昇傾向にあることが分かります。

各種指標(2020年3月時点)

株価収益率(PER) 12.32倍 

株価純資産倍率(PBR)  1.57倍

株価収益率、株価純資産倍率は高くも低くもなく市場からは一定の評価を得ている銘柄であることが分かります。

損益計算書分析

2020年3月期の連結損益計算書の概要は以下の通りとなっております。

売上高について

売上高は3兆8,577億円となっております。富士通は主に3つの事業を展開しており、それぞれの売上は以下のとおりとなっております。

パソコンのイメージが強いですが、売上の中心はシステムインテグレーション等のコンピューターやインターネット通信関連のサービス事業が中心となっていることが分かります。

粗利率について

2020年3月期の粗利率は28.7%となっております。システムサービスが中心であればもっと高いことが想定されますが、それほど高くないようです。過去5年間の粗利率の推移は以下のとおりとなっております。

粗利率は比較的安定して推移していることが分かります。システムサービスが売上の中心であれば、人件費等の固定費が大きい費用構造となることが想定されるため、粗利率はもっとぶれることが想定されますが、こちらも意外な結果になりました。

おそらく、受注した業務を下請け会社に再委託してるのではないかと思います。それによって固定費を変動費化することができますし、粗利率が低くなるのも頷けます。

貸借対照表分析

富士通株式会社の2020年3月期の連結貸借対照表の概要は以下の通りとなっております。

資産のうち最も大きな金額を占めているのが売掛金です。回転期間は2.7ヶ月となっております。有形固定資産は、建物や機械装置が大きな金額を占めております。機械装置は減価償却が進んでいるものも多いため、製造設備は比較的長く使えるものがおおいようです。

自己資本比率は42%となっております。借入金もそれほど多くなく、財務体質は健全なようです。

セグメント別分析

富士通株式会社は、テクノロジーソリューション、ユビキタスソリューション、デバイスソリューションの3つの事業を報告セグメントとして識別しております。各セグメントの事業内容は上記の売上の内訳の箇所に記載した通りとなっております。

テクノロジーソリューションセグメント

テクノロジーソリューションセグメントの業績の推移は以下のとおりです。

売上の約8割を占めるテクノロジーソリューション事業は利益の面でも大半を占めております。過去8年の業績は概ね安定的に推移していることが分かります。

ユビキタスソリューションセグメント

ユビキタスソリューションセグメントの業績の推移は以下のとおりです。

2017年3月期に大きく売上が減少しています。これはカーエレクトロニクス事業を行なっていた富士通テンをデンソーへ売却したことによるものです。業績の浮き沈みが大きいセグメントのようです。

デバイスソリューションセグメント

デバイスソリューションセグメントの業績の推移は以下のとおりです。

2020年3月期の売上が大きく減少しています。三重工場の譲渡や販売子会社の譲渡があった影響となっております。事業の再編を経て今後業績が好転することが期待されます。

まとめ

今回はシステムサービス、サーバー、パソコン等の製造販売を行なっている富士通株式会社を取り上げました。パソコンのイメージが強かった同社ですが、システムや通信関連のサービス売上がメインの会社となっておりました。日本の製造業が衰退していく中で、見事に事業の転換を果たした会社だと思います。主力事業のIT関連事業は国内首位の売上高を誇り業績は安定しています。サーバーやパソコンを作っている会社だからこそできるサービスもあるのではないかと思います。メーカーとIT会社の2つの顔を持つ富士通は今後も安定的に利益を稼得することが期待できるのではないかと思います。

総合評価

以上を踏まえ筆者の富士通株式会社の財務数値の評価は以下の通りです。