日本企業の分析

東急不動産ホールディングス バランスの良い会社

東急不動産ホールディングスってどんな会社?

東急不動産ホールディングス株式会社は東京都渋谷区に本社を置く持ち株会社で傘下の会社を通じてオフィス、住宅の賃貸、管理等を行っています。2020年3月期の連結売上高は9,631億円、連結従業員数は22,953人の大企業です。その歴史は古く1953年に東京急行電鉄株式会社から不動産販売事業の譲渡を受けて設立されました。その後不動産の賃貸事業、ビルの管理事業、ゴルフ場運営事業など不動産に関連する様々な事業に進出して規模を拡大してきました。1976年には住宅関連及びDIY用品を扱う東急ハンズを設立し小売事業も展開しております。2013年に東急不動産、東急コミュニティ、東急リバブルの3社の完全親会社として東急不動産ホールディングスが設立され、現在に至ります。東京急行電鉄株式会社の持分比率は約16%となっております。

各種指標及び株価の推移

株価の推移

東急不動産ホールディングス株式会社の2020年3月から過去5年間の株価の推移は以下の通りとなっております。

株価は上がり下がりを繰り返していますが、長期的には下落傾向にあることが分かります。

各種指標(2020年3月時点)

株価収益率(PER) 9.64倍 

株価純資産倍率(PBR)  0.63倍

株価収益率、株価純資産倍率は共に低い水準にあります。市場からは成長があまり評価されていない銘柄のようです。

損益計算書分析

2020年3月期の東急不動産ホールディングスの損益計算書の概要は以下の通りとなっております。

売上高は9,000億円を超えております。不動産デベロッパーとしては国内有数の規模となっております。営業利益率は8.2%となっております。不動産の賃貸、販売、仲介、管理等様々な事業を行なっており、事業によって利益率は大きく異なります。詳細はセグメント別分析で見ていきましょう。営業外費用が132億円計上されております。このうち約102億円は支払利息です。多額の借り入れを行なっているため利子も巨額になっております。

セグメント別の業績

東急不動産は以下の7つの事業を報告セグメントとして識別しており各セグメントの事業の概要は以下の通りです。

2020年3月期のセグメント別の業績は以下の通りです。

売上、利益が最も大きい事業は都市事業です。収益は主に賃貸料、費用は主に減価償却費、水道光熱費、人件費であることが想定されます。東急不動産の賃貸オフィスの8割以上が渋谷区、港区、中央区、千代田区の都心の4区に集中しております。また2001年以降に竣工したビルが6割以上あり新しいビルが多いのが特徴です。東京23区のオフィス需要は堅調に推移していることから今後も安定して収益を確保できることが見込まれます。

仲介事業は住宅事業同様に、継続的な取引ではなく売り切りの取引ですから景気動向に左右されやすい事業となっております。

ウェルネスは新型コロナウィルスの影響を最も受けそうな事業です。リゾート関連事業は浮き沈みが激しい事業です。

管理事業は主に子会社の東急コミュニティが行なっている事業です。。既存のマンションやオフィスを管理する事業ですから景気動向に左右されにくく安定的に収益を確保できる事業なのではないでしょうか。

ハンズ事業は、名前の通り東急ハンズ事業です。売上高は964億円、利益は7億円となっております。私もたまに利用しており、お客さんの入りも上々であることから儲かっているイメージがありましたが、それほど利益率は良くないようです。どの店舗も立地がとてもいいことから賃料の負担が相当大きいのでしょう。

貸借対照表分析

2020年3月期の東急不動産ホールディングスの連結貸借対照表の概要は以下の通りです。

棚卸資産について

通常の会社が不動産を取得した場合には固定資産として計上されますが不動産会社が販売を目的として保有している不動産は棚卸し資産という扱いとなるため流動資産に計上されております。販売用不動産として2,873億円、仕掛販売用不動産として3,665億円計上されております。住宅事業の分譲マンションの在庫が主に計上されていることが想定されます。住宅事業の年間売上高は1,361億円ですから在庫が過剰であるようにも思えます。

有形固定資産について

固定資産については土地が7,287億円、建物が2,729億円となっております。主にオフィスビルや商業施設の賃貸事業に使用している不動産が計上されております。賃貸等不動産関係の注記で賃貸等に使用している不動産の時価を開示することが求められております。当該注記によると2020年3月時点で賃貸等不動産の帳簿価格は8,344億円であるのに対して時価は1兆915億円となっており2,571億円もの含み益があるようです。

借入金について

次に貸方について見ていきましょう。巨額の運転資金の大部分は借入によってまかなっていることがわかります。借入残高は長期借入金と短期借入金を合わせて1兆510億円にのぼります。年間の支払利息は102億円でしたから単純計算ですが利率は1%を下回っている計算になります。不動産会社は日銀のゼロ金利政策の恩恵を最も受けている業種と言えるかもしれません。金利が1%あがるだけで毎年100億円以上の利益が消し飛ぶと考えると、金利の市場動向も注視しなければなりません。

まとめ

今回は東急不動産ホールディングスについて取り上げてきました。東急不動産の強みは2点あると思います。それは東京を中心に事業展開している点と、バランス良い事業ポートフォリオです。東京一極集中と言われているように東京の人口は増加傾向にあり、オフィス、住宅の需要は伸びる傾向にあり、東京に強みを持つ東急不動産は今後も成長が期待できると思います。また賃貸、販売、仲介、管理といった不動産に関係するあらゆる需要に対応してバランスよく事業を展開している点も経営の安定性に大きく貢献しています。

総合評価

以上を踏まえ筆者の東急不動産ホールディングス株式会社の財務数値の評価は以下の通りです。