日本企業の分析

江崎グリコ株式会社 決算分析

江崎グリコ株式会社ってどんな会社?

江崎グリコ株式会社は大阪府大阪市に本社を置く食品メーカーです。主に菓子、冷菓、飲料、加工食品、牛乳、乳製品、食品原料の製造販売事業を行なっております。1921年に江崎利一がグリコーゲンを主成分とする栄養菓子のグリコの製造販売を目的として江崎商店を創立したことから事業がスタートします。1954年に大阪証券取引所へ上場しております。コーポレートスローガンは「おいしさと健康」は創業者の国民の健康に貢献したいという強い思いが込められているそうです。2019年3月期の連結売上高は3,502億円、連結従業員数は5,381人となっております。

各種指標及び株価の推移

株価の推移

江崎グリコ株式会社の2019年3月から過去5年間の株価の推移は以下のとおりとなっております。

2014年から2015年にかけて大きく上昇し、その後は横ばい傾向にあることがわかります。

各種指標(2019年3月時点)

自己資本比率 61.4%

株価収益率(PER) 32.32倍 (東証一部平均 15.9倍)

株価純資産倍率(PBR)  1.79倍 (東証一部平均1.2倍)

自己資本比率は61.4%と高い水準にあり財務体質は健全なようです。株価収益率と株価純資産倍率は共に東証一部の平均を大きく上回っており市場からの期待が大きい銘柄であることがわかります。

損益分析

江崎グリコ株式会社の2019年3月期の連結損益計算書の概要は以下のとおりとなっております。

粗利率は47.4%となっておりかなり高い水準にあります。以前当ブログで紹介をした同業他社の森永製菓の粗利率は51.8%でしたから森永製菓よりは少し低いようです。販管費が約1,493億円と巨額になっております。以下でもう少し詳しく見ていきましょう。

販管費について

江崎グリコ株式会社の2019年3月期の販管費の主な内訳は以下のとおりとなっております。

販管費の3分の1以上を占めて、最も大きい金額となっているのが販売促進費です。主に小売店へのリベートであることが推定されます。同業他社の森永製菓でも巨額の販売促進費が計上されておりました。2社の比較は以下のとおりです。

江崎グリコのほうが売上に対する販売促進費の割合は江崎グリコの方が小さくなっていることがわかります。リベートは実質的には値引きです。先ほど粗利率の比較では江崎グリコの方が低くなっておりましたが、森永製菓はリベートを多く支払っているため、実質的な粗利率はほとんど変わらないとも言えそうです。

運送保管料も大きくなっております。お菓子は単価が低い割には体積が大きいため運送費の割合は大きくなってしまっております。

セグメント別分析

江崎グリコ株式会社は以下の5つを報告セグメントとして識別しております。

2019年3月期のセグメント別の業績は以下のとおりとなっております。

やはりお菓子とアイスクリームが稼ぎ頭であることが分かります。この2つのセグメントで利益の大半を稼いでおります。乳業製品も売り上げは大きいですが、明治や森永といった競業他社が強いためか、あまり利益は大きくないようです。

海外事業について

海外事業の売上高が515億円となっております。江崎グリコは近年アジア地域に力を入れております。2014年にインドネシア、2017年にマレーシア、2018年にフィリピンに新会社を設立しており、以下の通り売り上げが急激に増加しております。

貸借対照表分析

江崎グリコ株式会社の2019年3月期の連結貸借対照表の概要は以下のとおりです。

現預金>流動負債となっており債務の支払い能力は全く問題ないことが分かります。棚卸資産の回転期間は約1ヶ月となっており森永製菓とほとんど同じぐらいの水準です。有形固定資産は994億円と大きくなっております。お菓子やアイスの製造設備が大きいため耐用年数はそれほど長くはなく、年間の償却費の負担額は137億円となっていました。

まとめ

今回は大手お菓子メーカーの江崎グリコ株式会社を取り上げました。森永製菓、湖池屋に次いで当ブログでは3社目のお菓子メーカーとなりました。以前取り上げた2社と同様に粗利率が高いものの販管費が大きいという費用構造となっておりました。また製造設備への投資が大きいためある程度の数量を販売できないと設備に投下した資金を回収できません。定番商品(グリコで言えばポッキーやビスコ)で稼いだキャッシュを新商品の開発や設備へ投資をして新しい定番商品を増やしていくという好循環を生み出すことで利益を拡大してきているようです。

また競合他社と比較した江崎グリコの強みは海外事業ではないかと思います。まだまだ国内事業の方が断然大きいものの、2019年3月期の海外事業の売上高は515億円もあり黒字事業となっております。同業他社の明治や森永製菓は海外売り上げ割合は10%未満であるのに対してグリコは約15%となっております。日本のお菓子は安くて美味しいので海外でもっと評価されてもいいのではないかと思います。