普段は投資者の観点で企業の決算書の分析を行なっている当ブログですが、今回は就職活動中の大学生向けに記事を書いていきたいと思います。決算書を使った企業分析で最低限チェックするべきポイントを解説していきたいと思います。
有価証券報告書について
今回説明する企業分析には有価証券報告書を使用します。有価証券報告書は主に上場企業が金融商品取引法に基づいて毎事業年度作成している書類です。
有価証券報告書の記載事項
有価証券報告書の記載事項は以下の通りです。
経理の状況に関する部分は主にその会社の決算に関する事項が記載されており、公認会計士による監査を受けることが義務付けられております。また有価証券報告書への虚偽記載は禁止されており違反した場合には罰則があります。そのため有価証券報告書に記載されている事項には信ぴょう性があると言えます。
ここだけは確認したい5項目
決算書を使った企業分析で絶対に確認すべき5項目を紹介します。5項目の記載場所は先ほどの有価証券報告書の記載事項の一覧で黄色でハイライトした部分です。
主要な経営指標の推移
主要な経営指標を見れば箇所には過去5年分の業績の推移が分かります。売上高と利益がどちらも減少傾向にある会社は要注意です。その会社が属している産業が衰退傾向にあることが推定できるため、これから先何十年も働く会社を選ぶにあたっては選択肢に入れない方がいいかもしれません。また赤字の会社であっても売上高が大きく伸びている場合には市場が成長していることが推定できるため、今はあまり有名な会社ではなくても将来化けるかもしれません。
従業員の状況
従業員の状況を見れば、なんとその会社の平均勤続年数と平均年収が分かります。
平均勤続年数が短い会社はブラック企業かもしれません。設立から間もない会社であったり、急速に事業を拡大しているような会社である等、納得できる理由がない限り生涯働く会社としてはあまり良くないかもしれません。
平均年収は大事です。お金よりもやりがいが大事という意見もあると思います。それも一理ありますが、就職したら希望の配属先へいけるかどうかは分かりませんし、仮に希望通りの配属先でも、その仕事は思い描いていた仕事と違う仕事かもしれません。そんな時待遇が悪かったら最悪ですよね。就職活動の時に平均年収をもっと重視しておけばよかったと後悔している社会人は多いでしょう。
研究開発活動
研究開発活動の箇所を確認すれば、その会社がどんな研究開発をしているか、研究開発費にどれだけの金額を使っているかを確認することができます。特に理系の就活生にとっては注目すべき項目だと思います。
株主等の状況
株主等の状況には、その会社の大株主が誰なのかを確認することができます。だいたい上位10名程度の株主が記載されていることが多いです。
ワンマン経営かも?
仮に大きな割合を個人で所有しており、その人物が社長を務めているとしましょう。その社長はオーナー社長ですから、その会社はワンマン経営である可能性が非常に高いです。意思決定が早くスピード感のある経営が期待できますが、社長が絶対君主の如く君臨して誰も逆らえない場合が多いでしょう。
子会社かも?
また半分以上の株式を他の会社が所有している場合にも注意が必要です。その会社は、株主となっている会社の子会社ということになります。子会社の場合には親会社からの出向社員が主要ポストを占めている場合があり、出世の難易度は上がってしまうかもしれません。しかし悪い面だけではありません。親は子の面倒を見るものです。強大な親会社がいれば経営が安定している可能性は高いですし、万が一倒産したとしても親会社が従業員を受け入れてくれるかもしれません。
セグメント情報について
セグメント情報の箇所を確認すれば、その会社の行なっている事業別の売上高と利益を確認することができます。例えば会社説明会では、花形のテレビ業界のお仕事ばっかりアピールしていたけど、実際にはテレビ業界関連の売上はほんの一部だった、ということもあるかもしれません。
またセグメント情報の箇所には地域別の売上高の内訳も確認することができます。海外と関わりのあるグローバルな仕事がしたいと希望している場合には、その会社の海外向けの売上割合は確認しておいたほうがいいでしょう。
有価証券報告書ってどこで見られるの?
さて、ここまでチェックすべき5項目を紹介してきましたが最後に有価証券報告書はどこで見られるかを紹介したいと思います。まず興味のある会社のホームページにアクセスしましょう。メニューのなかで「投資家向け」、「IR情報」といったページがあると思いますので、そこから有価証券報告書を探してください。稀にホームページで公開していない会社がありますが、「EDINET」のページにアクセスすれば全ての会社の有価証券報告書を見ることができます。冒頭の部分でも述べましたが、有価証券報告書は主に上場会社に提出が義務付けられている書類ですから、非上場の会社のものは見ることができません。
決算書を使った企業分析であなたにとっての優良企業を探して見ましょう。