日本企業の分析

沖縄電力株式会社 決算分析

沖縄電力株式会社ってどんな会社?

沖縄電力株式会社は沖縄県浦添市に本社を置く電力会社です。2020年3月期の連結売上高は2,042億円、連結従業員数は2,752人となっております。沖縄電力は1972年に琉球電力公社の全ての発送電業務を引き継ぎ、政府と沖縄県の出資により特殊法人として設立されました。1992年に東京証券取引所市場第二部、福岡証券取引所へ株式を上場しました。

各種指標及び株価の推移

株価の推移

沖縄電力株式会社の2020年3月期から過去5年間の株価の推移は以下のとおりです。

株価は2018年ごろまでは上昇傾向にありましたが、その後は低迷傾向にあることが分かります。

各種指標(2020年3月時点)

株価収益率(PER) 15.30倍 

株価純資産倍率(PBR) 0 .66倍

株価収益率、株価純資産倍率はそれほど高くはなく市場からはあまり期待されていない銘柄であることが分かります。

損益計算書分析

沖縄電力株式会社の2020年3月期の連結損益計算書の概要は以下の通りとなっております。

営業収益について

営業収入の大部分を占めるのが電気料金収入となっております。販売電力量と料金収入の過去5年間の推移は以下の通りです。

販売電力量は減少傾向にあることが分かります。これは主に電力小売の自由化による減少であると推定されます。一方で発電や送配電は沖縄電力が担っているおり他社販売電力料、託送収益といった別の科目で収益が計上されております。そのため小売りの自由化による影響はそれほど大きくはないと言えるのではないでしょうか。

電気料金は毎月変動しています。先ほどの表では2017年3月期の販売電力量は最も大きくなっていますが料金収入は最も小さくなっております。これは燃料費調整制度によるものでしょう。燃料の調達価格の変動に応じて電気料金が変わる制度となっています。この制度があることで電力会社は収益を安定的に確保できます。

営業費用について

営業費用のうち大部分を占めるのが電気事業営業費用となっております。電気事業営業費用の内訳は以下のとおりとなっております。

最も大きな金額を占めているのが燃料費となっております。変動費の性質が強い費用です。また燃料費調整制度により燃料価格は電力料金へ転嫁できる場合が多い費目です。

他社購入電力料は、外部の発電事業者から調達している電力に関する費用だと思われますので変動費と考えて問題ないでしょう。人件費、修繕費、減価償却費は固定費の側面が強い費用です。発電所のタービン等の設備は定期的な点検が義務付けられており大きな費用がかかります。

再エネ特措法納付金は、太陽光、風力、バイオマスといった再生可能エネルギーの発電の普及のために電気利用者から集金したものを支払うことによって発生する費用です。全額電気利用者負担となるため変動費です。電気料金の約1割もの金額が再生可能エネルギーの普及のために使われているのは少し驚きです。

貸借対照表分析

沖縄電力株式会社の2020年3月期の連結貸借対照表の概要は以下のとおりとなっております。

資産の大部分を占めているのは電力事業固定資産となっております。電気事業固定資産の内訳は以下のとおりです。

汽力発電設備が約978億円計上されております。汽力発電とは水蒸気の力でタービンを回して発電する方法です。沖縄電力では重油、石炭、LNGといった火力発電が中心で原子力発電は行なっておりません。送電設備、配電設備の合計の計上額は1,298億円となっております。沖縄中に電柱や電線を張り巡らせるために巨額の設備投資をする必要とするようです。ちなみに2020年3月期の減価償却費は223億円となっております。

負債の部に注目すると、社債と長期借入金が多く計上されております。電力会社ということもあり信用力が高いため、低金利で資金調達ができているようです。

セグメント別分析

沖縄電力株式会社の2020年3月期のセグメント別損益は以下のとおりとなっております。

電力事業とその他という区分になっております。その他セグメントは土木、建築等の工事や電力設備の施工、保守等を行なっているセグメントとなっております。利益率が高いセグメントとなっております。

まとめ

今回は沖縄電力株式会社を取り上げました。2016年から始まった電力小売の自由化により、どの程度影響があったのか興味があったのですが、あまり影響を受けていないことが分かりました。2020年3月時点で、沖縄電力から別の事業者へ切り替えている人は3.9%にすぎず、切り替えはあまり進んでいないようです。また今後切り替えが進んだとしても、発電設備と送電設備を所有しているのは沖縄電力ですから、小売り事業者は電力を沖縄電力から購入し、沖縄電力の配送電設備を使わなければならないため、沖縄電力の収益はそれほど変わらないのではないかと考えられます。

工業や観光といった分野では景気の動向によって電力需要は多少はぶれがあるものの、やはり電力は生活必需品であるため一定の需要が見込まれます。燃料代は基本的に電力価格に転嫁できるため、今後も安定した業績が見込まれます。一方で沖縄の人口が増加すると予想されていますが、電力需要が爆発的に伸びることは期待できないため成長性という意味では大きな期待はできないと思われます。

総合評価

以上を踏まえ筆者の沖縄電力株式会社の財務数値の評価は以下の通りです。