日本企業の分析

株式会社キーエンス 決算分析

株式会社キーエンスってどんな会社?

会社概要

株式会社キーエンスの会社概要は以下のとおりです。

会社の概要
  • 本社所在地:大阪市
  • 設立:1974年
  • 事業内容:電子応用機器の製造販売
  • 売上高:5,381億円
  • 従業員数:8,380人

株価の推移

キーエンスの2021年3月から過去5年間の株価の推移は以下のとおりです。

株価は概ね日経平均と近い動きをしていることが分かります。

損益計算書分析

キーエンスの2021年3月期の連結損益計算書の概要は以下の通りとなっております。

売上高は5,381億円となっております。粗利率は約82%となっております。物を売っている会社で粗利率が80%を超えているというのは驚異的です。営業利益律も51%と非常に高い水準にあります。

製造費用の内訳

キーエンスの製造費用の内訳は以下のとおりとなっております。(単体のデータです。)

キーエンスは工場を持たないファブレスの会社です。生産は外部の協力企業へ委託をしております。外部工場での生産委託費が外注加工賃として計上されているのでしょう。バランスシートには原材料や棚卸資産が計上されていますから、生産に関する在庫リスクはキーエンスが負っていることが想定できます。

販管費について

販管費の内訳は以下のとおりとなっております。

最も大きな金額を占めているのが人件費となっております。キーエンスは最終顧客と直接取引きすることで顧客からのニーズを拾い上げて付加価値の高い製品を生み出しています。そのため営業人員を多く抱えていることが想定されます。

また給料が高いことでも有名です。2021年3月期のキーエンス本体の平均年収は1,751万円となっておりました。上場企業の給料の2倍〜3倍の水準です。

研究開発費は約160億円とそれほど大きくはありません。技術力というよりは営業に力を入れていることが決算数値からも読み取れます。

地域別の売上高

キーエンスの2021年3月期の地域別の売上高の内訳は以下のとおりとなっております。

日本向けの売上高は44%となっております。中国とアメリカで約30%、その他の地域で25%と比較的バランスがいい構成になっています。過去10年で、ブラジル、インド、インドネシア、ベトナム、フィリピンといった新興国に現地法人を設立しており今後これらの地域で売上が伸びることが期待できます。

キーエンスの2020年12月期の損益計算書のポイントは以下のとおりです。

貸借対照表の分析

2021年3月期のキーエンスの連結貸借対照表の概要は以下のとおりとなっております。

資産の大きな割合を占めているのが、有価証券、投資有価証券となっており合計で1.3兆円にもなります。現預金も4,000億円以上保有しております。

株主還元が少ないという批判があるようですが、確かに余剰資金が豊富にあるのは間違えなさそうです。

売上債権の回転期間は約4.1ヶ月となっております。

自己資本比率は約95%となっており財務体質は全く問題なさそうです。

まとめ

今回は優良企業で知られるキーエンスを取り上げました。粗利率82%、営業利益率51%と驚異的な高収益企業となっておりました。エンドユーザー向けに直接営業をすることで、顧客のニーズにあって製品を開発できることが強みと言われていますが、決算書からも営業に力を入れていることがうかがえました。

一方でキーエンスのビジネスモデルは急成長は狙えないビジネスモデルではないかと思います。実際に過去5年間で売り上げはあまり伸びていません。優秀な営業社員を育成し、顧客との信頼関係を築くことには時間がかかります。豊富な資金力を背景にM&Aをすれば一気に規模の拡大も可能ですが、キーエンスが大型のM&Aをしたという情報は見当たりませんでした。基本的なことを着実に積み上げてきたからこそ高収益を実現できているのではないかと思います。

総合評価

以上を踏まえ筆者の株式会社キーエンスの財務数値の評価は以下の通りです。