株式会社ゼンリンってどんな会社?
株式会社ゼンリンは福岡県北九州市に本社を置く地図データベースの販売事業等を行なっている会社です。2020年3月期の連結売上高は597億円、連結従業員数は3,029人となっております。1948年に大迫正富氏らがのちのゼンリン出版社を創業して事業をスタートしました。1952年には「別府市住宅案内図」を発行しました。その後1974年に株式会社善隣を設立しました。1980年代頃から地図をデータ化してカーナビ向けの地図データを作成して事業を拡大しました。1994年には福岡証券取引所へ上場を果たしました。
各種指標及び株価の推移
株価の推移
株式会社ゼンリンの2020年3月期から過去5年間の株価の推移は以下のとおりです。
株価は2018年頃に大きく上昇していますが、最近は低迷傾向にあることが分かります。
各種指標(2020年3月時点)
株価収益率(PER)20.98倍
株価純資産倍率(PBR) 1.39倍
株価収益率と株価純資産倍率は標準的であり市場からは一定の評価を得ている銘柄であることが分かります。
損益計算書分析
2020年3月期の連結損益計算書の概要は以下の通りとなっております。
粗利率は約40%となっております。ゼンリンは地図データを売っており、主な原価は地図データの作成費用ですから、作成には非常に大きな費用がかかっていることが分かります。以下は過年度の粗利率の推移となっております。
売上高は概ね増加傾向にありますが、粗利率は40%程度で推移しております。地図データの作成は固定費が大きいため売り上げが伸びれば粗利率も大きく上昇するのではないかと考えたのですが、それほど伸びていないようです。
売上高の内訳
ゼンリンは主に以下の6つの事業を行なっており、事業内容と売上高は以下のとおりとなっております。
プロダクト事業、オートモーティブ事業、IOT事業の3つがそれぞれ売上の約25%を占めており主力事業となっております。プロダクト事業は安定した売上の推移が期待できそうな事業となっております。
オートモーティブは自動運転が導入されれば、地図情報はより重要な役割を果たすことになるため成長が期待できる分野だと思います。IOTサービスについてはドローンの自律飛行等の様々な分野で位置情報の活用が期待されているようです。
Googleとの関係について
ゼンリンと言えばGoogle Mapの地図情報を提供している?していた会社です。2019年頃にGoogleへの地図情報の提供を止めたのでは無いかといった報道がされておりました。真偽は分かりませんが有価証券報告書においては売上高の10%を超える相手先については開示することになっております。過去5年間の有価証券報告書ではGoogle(Alphabet.Inc)向けの売上については開示がされておりませんでした。ゼンリンのGoogle向けの売上は10%以下で有ることが推定されます。Google向けの地図情報の提供が終了したとしても会社の存続を揺るがすようなインパクトは無いのでは無いかと思います。
販管費について
株式会社ゼンリンの販管費の内訳は以下のとおりです。
販管費の内訳については詳細には開示されておりませんでした。人件費が大きいことが分かります。企業向けの売上が大半を占めるため営業人員が多いのでは無いかと思います。2020年3月期の研究開発費は約10.9億円となっております。
貸借対照表分析
株式会社ゼンリンの2020年3月期の連結貸借対照表の概要は以下のとおりとなっております。
売上債権の回転期間は約2.8ヶ月となっております。有形固定資産は土地と建物が主です。無形固定資産の大半がソフトウェアとなっております。販売目的で作成された地図データが計上されているのでしょう。
借入金は少なく、自己資本比率は約60%となっており財務体質は健全なようです。
セグメント別分析
株式会社ゼンリンは地図データベース関連事業と一般印刷関連事業の2つの事業を報告セグメントとして識別しております。セグメント別の業績は以下のとおりとなっております。
データベース関連事業が売上、利益の大半を占めております。紙の地図も販売しており利益をあげているようです。
まとめ
今回は地図データベースの販売事業等を行っている株式会社ゼンリンを取り上げました。地図データは、建設業者、不動産業者、カーナビメーカー、自治体といった幅広い業界で活用されており、事業基盤は安定している印象を受けました。日本の地図データベースの分野では確固たる地位を保持しております。地図の作成には地道な作業が必要であり参入障壁も高いのでは無いかと思います。自動運転やIOTの分野に対応していくことができればさらなる成長も期待できそうです。
総合評価
以上を踏まえ筆者の株式会社ゼンリンの財務数値の評価は以下の通りです。