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ROEとは 長所と短所を解説

普段は様々な会社の財務諸表の分析をしている当ブログですが、経営指標の解説もしていきたいと思います。記念すべき第1回目はROEです。

ROEの算定方法

ROEの算定方法は以下の通りです。

ROEはReturn on equityの略称で、当期純利益を自己資本で割ることで算定することができます。分子に経常利益や営業利益を使うこともあるようです。

分母に自己資本を使っているため、株主からの投資に対してどれだけ利益を稼ぐことができたかを計測することができます。基本的にはROEは低いよりも高いほうが良い指標となります。

ROEの長所

業界をまたいだ企業間の比較に使える。

ROEの長所は業界をまたいだ企業間の比較ができるところです。業界によってROEが高い業界や低い業界があり、業界をまたいだ企業間の比較が可能かどうかという点には異論はあると思います。個人的には、業界をまたいだ企業間の比較ができる数少ない指標であると思います。以下の2社を例にとって見ていきましょう。

オリエンタルランドは誰もが知っている東京ディズニーリゾートの運営を行なっている会社です。宇部興産は山口県宇部市に本社を置く大手化学メーカーです。この2社の業績と各種指標は以上の通りとなっております。利益率についてはオリエンタルランドの方が高くなっています。オリエンタルランドはサービス業であるのに対して、宇部興産は製造業です。製造業は原材料を仕入れて製品を販売しているため一般的に、サービス業よりも利益率は低くなる傾向にあります。そのため、利益率だけではこの2社がどちらが優れた企業であるかを判断することはできません。

一方で従業員一人当たりの売上高や総資産は宇部興産の方が大きくなっています。ディズニーランドには、たくさんのキャストがいてお客様のおもてなしをしています。化学工場は生産工程の大部分が自動化されており、人員はそれほど必要ありません。一人当たりの売上高や総資産の差は、ビジネスモデルの違いにより発生しているものであり、業界をまたいで比較しても意味がありません。

ROEは業界による偏りが比較的少ない、利益額と自己資本を使って算定しているため業界間の企業比較にも使いやすい指標であると言えると思います。

ROEの短所 

自己資本比率が低いほどROEは高くなる。

どの指標にも欠点があり、ROEも例外ではありません。ROEは自己資本比率が低いほど高くなるという性質があります。以下は2019年3月期のシャープと三菱電機の単体決算数値に基づいて算定した値です。

自己資本比率、利益率はともに三菱電機の方が高くなっています。この2つの指標だけで判断するならば、三菱電機の方がシャープよりも安全性が高く、収益性が高い会社であると言えると思います。しかしこの2社のROEはどうでしょうか。実はシャープの方が三菱電機よりもROEは高くなっています。自己資本比率が低いと分母が小さくなるため、ROEは高くなります。ROEだけを見て投資先を決めてしまうと、リスクの高い投資先を選んでしまうこともあるため注意が必要です。

まとめ

今回は代表的な経営指標の一つであるROEを取り上げました。ROEは汎用性が高い指標ですが、リスクが高い会社を過大評価してしまう可能性がある指標であります。ROEの長所と短所を理解して企業価値を正しく判断しましょう。

ROEへの偏重が企業をダメにする?

ROEは資本効率を図る指標です。つまり余剰資産があればあるほど、ROEは悪化します。手元に現金があるならば自社株買いや配当をしたほうがROEは改善されます。また固定資産への投資はせずにリースや外部委託に頼った方がROEは改善されます。経営が順調な時なそれで問題ないでしょう。しかしリーマンショックのような金融恐慌が発生した場合には頼みになるのは、手元現金や売却可能な資産です。資本効率を意識することは大事ですがROEを重視しすぎると財務体質の悪化を招き、景気悪化局面では取り返しがつかない事態を招く可能性があります。