日本企業の分析

株式会社ツムラ 決算分析

株式会社ツムラってどんな会社?

株式会社ツムラは東京都港区に本社を置く医薬品の製造、販売を行っている会社です。2019年3月期の連結売上高は1,209億円、連結従業員数は3,547人となっております。その歴史は古く1893年に津村重舎が婦人薬の中将湯の販売を行う津村順天堂を創業したのが始まりです。1980年に東京証券取引所2部に上場を果たしました。現在も医療用の漢方でトップシェアを誇る会社となっております。

各種指標及び株価の推移

株価の推移

2019年3月から過去5年間の株価の推移は以下の通りとなっております。

上がり下がりを繰り返しておりますが概ね上昇基調にあるようです。

各種指標(2019年3月時点)

売上高 1,209億円

自己資本比率 70.2%

株価収益率(PER) 19.81倍 (東証一部平均 15.9倍)

株価純資産倍率(PBR)  1.33倍 (東証一部平均1.2倍)

自己資本比率は70.2%と健全な水準にあることがわかります。

株価収益率と株価純資産倍率は東証一部平均よりも若干高い水準にあり市場からは一定程度規定されている銘柄であることがわかります。

業績予想とその達成状況

株式会社ツムラの過去5年間の業績予想とその達成状況は以下の通りとなっております。

売上については過去5年間のうち4年間は未達となっておりますが、予測値とかなり近似しているため予測の精度は比較的高いと言えると思います。利益については、2018年3月期のみ未達ですが、その他の年度では予測を5%以上上回っています。

損益分析

2019年3月期の株式会社ツムラの損益計算書の概要は以下の通りとなっております。

粗利率は59%と非常に高い水準にあります。漢方薬の分野でトップシェアで競争もそれほど激しくないのかもしれません。営業利益率も15%ありますから、収益力は高いと言えると思います。

製造費用・販管費の内訳

製造費用の内訳は以下の通りとなっております。(連結の内訳データは無いため、単体の数値です。)

上記の通り製造費用のうち原材料費の占める割合が7割近いため変動費が大きいことがわかります。続いて販管費の内訳は以下の通りです。

最も大きい費目は給料諸手当となっております。次いで大きいのが販売感謝金となっております。おそらく得意先へのリベートでは無いかと推定されます。リベートは売上高に応じて数パーセントキャッシュバックする性質のものですから変動費の性質が強い費目です。研究開発費も約59億円計上されております。主に漢方薬の効果を科学的に実証するための活動をしているようです。

過去の業績の推移

株式会社ツムラの過去の業績の推移は以下の通りです。

安定した業績

上記の通り株式会社ツムラの売上高は非常に安定して推移していることがわかります。リーマンショックによる影響もほとんどありません。売上が安定している主な要因は、売上の構成割合にあります。下記の通り売上の95%は医療用漢方製剤といって医者により処方される漢方薬の販売により稼得しています。そのため景気の動向にはほとんど左右されないようです。

為替リスクについて

株式会社ツムラは、9割以上を国内向けに販売している一方で原材料の多くを輸入しているようです。2019年3月期末時点で、180億円分の米ドル、114億円分の人民元の買予約の残高が残っています。輸入企業ですので円安が進行した場合には業績にマイナスの影響があります。

まとめ

今回は医療用漢方薬でトップシェアを誇る株式会社ツムラを取り上げました。利益率も高く、非常に安定した会社であることが分かりました。一方で売上のほとんどが、医療用漢方薬であり、国の規制や制度改正に大きく影響を受ける分野であることには留意しておいたほうがいいでしょう。また海外向けの売上はほとんどありません。製薬関連の分野は、国の規制に大きな影響を受ける分野です。漢方薬はまだまだ科学的な根拠が無いという考え方も根強く、海外で認可を取るのは非常に難しいと考えられますから、今後海外展開ができるかは不透明です。

総合評価

以上を踏まえ筆者の株式会社ツムラの財務数値の評価は以下の通りです。